前立腺生検とは
前立腺がんは男性特有のがんで、2020年の統計において男性では罹患率一番高いがんです。前立腺がんの進行は緩やかなので、前立腺がんでありながら他の理由で死亡するというように寿命に影響しない場合もあり、また早期に発見すると治癒が可能ながんです。とはいえ、転移する場合も少なくありませんので、最近では、早期発見を目的として、採血によるPSA測定を受ける場合が増えています。ただし、PSA値は炎症や前立腺肥大などでも上昇するため、がんの有無を確定するためにはさらなる検査が必要です。PSAが異常値を示した場合、MRI検査、直腸診などを行い、さらに前立腺がんが疑われるようであれば、前立腺生検が行われます。前立腺生検では、前立腺の細胞を複数の場所から採取し、病理診断によって、がん細胞かどうかが判断されます。
PSAについて
PSAは前立腺で特異的に産出されるたんぱく質です。正常な前立腺でも低レベルで産出されますが、前立腺が異常を起こすとPSAの産出量が増加し、血液中のPSA濃度が高くなります。例えば、前立腺がんが進行してがん細胞が増えると、PSAの産出量が増加し、血液中のPSA濃度も上昇しますので、PSAは前立腺がん細胞のマーカーとして有効です。このことから、がんの有無を調べる検査として、採血した血液中のPSA濃度を測定します。しかし、前立腺がん以外の前立腺炎や前立腺肥大でも、PSA濃度が上昇しますので、あくまでもスクリーニング検査に過ぎず、確定診断するためには前立腺生検を実施する必要があります。
PSAの正常値の範囲は、64歳以下は3.0以下、65-69歳は3.5以下、70歳以上は4.0以下というように、年齢によって異なります。PSAの場合、測定する度に数値が若干上下するのは普通に起きることです。そのため、当院ではPSA値だけでなく、PSAF/T比を検討し、がんの可能性が高いと判断された場合のみ、MRI検査、前立腺生検を行うことを患者様に推奨しています。
日帰り前立腺生検を行っています
当院では、日帰りで前立腺生検を行い、入院する必要がありません。前立腺生検のやり方は病院によって異なりますが、当院では身体の負担を最小限にできる経直腸的前立腺生検法を採用しています。具体的には、超音波プローブを肛門から挿入して前立腺を観察しながら、直腸側から細い針を前立腺に突き刺すようにして、複数の場所から細胞を採取します。事前に静脈麻酔および仙骨硬膜外麻酔を行いますので、検査中は痛みを感じません。合併症として出血が続いたり、感染や排尿障害などが起きたりする場合もありますが、頻度は極めて低いです。病理診断の結果が出るまでは10日〜14日ほどかかります。
当院の日帰り前立腺生検
痛みが少ない
仙骨硬膜外麻酔および静脈麻酔を行いますので、検査中は痛みをほとんど感じません。
時間的・経済的負担が少ない
仕事などが忙しく、泊まりのスケジュールを調整するのが難しい方でも、日程調整は比較的容易になります。また、検査当日帰宅できるので心理的ストレスも低く、入院費がかからないので経済的負担も軽減できます。
前立腺がんであることが判明したら
前立腺がんの進行は、他のがんに比べて比較的ゆっくりなので、がん細胞の悪性度だけではなく、各治療法のリスクや合併症の有無、患者様の年齢、健康状態、ご希望などによってじっくり治療法を検討することができます。選択できる治療方法のオプションとしては、監視療法、内分泌療法(ホルモン療法)、化学療法、放射線療法(重粒子線、陽子線、IMRT,密封小線源)、ロボット手術などがあり、場合によっては複数の治療を行います。
当院では、生検で前立腺がんと判明したら、患者様のお考えやご希望を伺い、治療方針についてしっかりとご相談いたします。必要なら、その治療方法に対して適切な医療機関をご紹介し、滞りなく治療が進むようにいたします。