性感染症について
性行為によってクラミジアや淋菌などが感染する病気のことを性感染症(STD)と呼びます。
20代・30代の患者様が多く、感染の主な原因はセックス、オーラルセックス(口腔性交)であると言われています。
性器の接触がなければ性感染症にはかからないという間違った理解や、適切な予防なしでの性交渉のため、性感染症の原因となる菌やウイルスに感染してしまうことが多いです。
性感染症を正しく理解し、必要だと思われたら泌尿器科専門医に相談しましょう。
当院での性感染症の検査や治療は健康保険が適用になります。尿検査で診断しますので、検査に痛みはありません。正しく診断を行い、完全に治すことが大切です。パートナーがいるのであれば、ピンポン感染を防ぐため、二人同時に治療することが重要です。
性病・性感染症の種類と症状
性病の種類や症状を以下に説明します。
クラミジア尿道炎
クラミジアは、細菌の一種であるクラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)が原因で引き起こされる性感染症です。
クラミジアは他にも3種類の代表的な種類がありますが、性器クラミジアを引き起こすのはこのクラミジア・トラコマティスです。そのため、ここで「クラミジア」と記載する場合は、この細菌を指しています。
この細菌は、男性では尿道炎、精巣上体炎、直腸炎などを引き起こし、女性では子宮頸管炎や骨盤内感染症を引き起こすことがあります。また、性器以外にも、目やのどの感染(結膜炎や咽頭炎)を引き起こすこともあります。
クラミジア尿道炎の症状
男性のクラミジア性尿道炎は、感染後1~3週間程度で症状が現れることが一般的ですが、無症状の方も多く、感染時期がはっきりしない場合もあります。淋菌性尿道炎と比べると、症状が軽いことが多く、分泌物も少量です。分泌物はサラッとした漿液性または少し粘り気のある粘液性で、排尿時の痛みも軽度で、かゆみや不快感を伴うことが多いです。クラミジア性の精巣上体炎も発熱が軽度であることが多く、中年以下の精巣上体炎の原因としてよく見られます。
検査
クラミジア性尿道炎の診断には、初尿を使ったPCR法などの核酸増幅法が用いられます。感度・特異度が高いため、他の検査方法はほとんど使用されません。
治療
治療の基本は予防です。性行為(オーラルを含む)の際に正しくコンドームを使用することで感染リスクを大幅に低減できます。また、不特定多数との性行為は避けるべきです。
治療では、抗生剤の内服を行います。
治療後は2~3週間後に再検査を行い、クラミジアが陰性であることを確認して治療が終了します。
淋病
淋病は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による性感染症で、クラミジアと並んで感染者が多いとされています。排尿時に痛みを感じたり、膿のような分泌物がある場合は淋病の可能性があります。一度感染しても抗体ができないため、再感染することがよくあります。
放置しておくと感染が広がり、男性では前立腺炎、女性では子宮内膜炎などの他の病気を引き起こす可能性があるため、早期治療が必要です。特にパートナーと共に治療を行うことが重要です。
淋病の症状
淋病は、2〜7日間の潜伏期間を経て発症します。感染部位によって症状が異なり、男性では排尿時の痛みやかゆみ、黄色や白色の膿のような分泌物が出ることが特徴です。女性では自覚症状がないことが多いです。
検査
問診や視診の後、尿検査や喉の検体検査が行われます。淋菌以外の性感染症(クラミジアなど)を併発している可能性がある場合には、追加の検査も行います。検査結果が出るまでに数日〜1週間かかることがあり、症状が明確な場合は結果を待たずに治療を開始します。
治療
淋菌性尿道炎や咽頭淋菌の治療は、注射または点滴で行われます。注射や点滴は1回で済むことが多いですが、淋菌に抗生物質耐性がある場合は追加の治療や再検査が必要です。
また、淋菌性結膜炎には点眼薬と内服薬を併用して治療します。
非クラミジア性非淋菌性尿道炎
非クラミジア性非淋菌性尿道炎は、クラミジアや淋菌以外の病原菌、ウイルス、寄生虫などによって引き起こされる尿道炎です。性行為やオーラルセックスによって感染することがあり、ウレアプラズマ、マイコプラズマ、トリコモナス、ヘルペスウイルスなどの細菌・ウイルスなどが原因で発症します。
非クラミジア性非淋菌性尿道炎の症状
尿道からの分泌物(膿)、排尿時の痛みやかゆみ、尿道の不快感などの症状が現れます。
症状は軽度であることが多く、クラミジア性尿道炎と類似した症状が見られることがあります。
検査
クラミジアや淋菌が検出されない尿道炎の症例や、治療がうまくいかない場合に検査が行われます。
検査には主にPCR法(核酸増幅法)が使用され、初尿を採取して病原菌のDNAを検出します。この方法は非常に感度が高いため、病原菌の特定に役立ちます。
治療
治療には、クラミジア性尿道炎で使用される抗生物質を使用することが一般的です。
原因菌がウレアプラズマやマイコプラズマである場合には、マクロライド系やニューキノロン系の抗生物質が効果的です。原因が特定され次第、その病原菌に対応する抗生物質が処方されます。
早期治療が重要で、パートナーの同時治療も推奨されます。
梅毒
梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)という細菌が原因で引き起こされる性感染症です。感染は主に性行為によるもので、感染者の粘膜や体液(血液、精液、膣分泌液など)が接触することで広がります。また、母子感染(妊娠中の母親から胎児への感染)も発生することがあります。
感染経路
- 性器、口、肛門を通じた性的接触
- キスなどの粘膜の接触
- 傷口からの感染
- 妊娠中の母子感染
感染後、無症状のまま他者に感染させてしまう場合もあるため、早期発見と治療が重要です。
先天梅毒
妊婦が感染していると、胎児に先天梅毒を引き起こす可能性があり、早産や死産、新生児の奇形などのリスクがあります。
潜伏期間
感染後、3〜6週間程度の潜伏期間を経て症状が現れることが多いです。
梅毒の進行段階と症状
第1期(感染後3週間〜3ヶ月)
感染部位(性器、唇、口、肛門)にしこりや潰瘍ができるほか、股の付け根のリンパ節が腫れることもあります。
症状が自然に消えることがありますが、体内には菌が残っているため他人に感染する可能性があります。
第2期(感染後3ヶ月〜3年)
菌が血液を通じて全身に広がり、全身に赤い発疹(バラ疹)が出現します。
手のひらや足の裏にも発疹が出ることがあります。
さらに、性器や肛門付近に扁平コンジローマが現れる場合があります。
発疹は自然に消えることもありますが、抗菌薬治療をしない限り梅毒トレポネーマは体内に残ります。
第3期(感染後3年〜数年)
皮膚、筋肉、骨に腫瘍(ゴム腫)ができることがあります。
鼻にできた場合、骨が溶けることで鞍鼻(あんび)が発生し、鼻が欠けてしまうこともあります。
第4期(感染後10年以上)
臓器にまで腫瘍が広がり、神経系や血管にダメージを与えます。
神経梅毒や大動脈炎、脊髄ろうなどが発生し、最悪の場合は死亡に至ることもあります。
現在では、第3期や第4期の末期まで進行することはほぼなく、第2期までの比較的初期に診断および治療されています。
検査と診断
感染から4週間が経過すると、採血による血液検査で梅毒の感染を確認できます。
RPRやTPHAなどの検査が一般的に行われます。
梅毒に感染している場合、HIV検査も併せて受けていただくこともあります。
治療法
治療には、ペニシリン系の抗生物質が使用されます。
飲み薬の場合、第1期で2〜4週間、第2期で4〜8週間服用します。
筋肉注射の場合、1回の注射で完了(臀部への注射)します。
早期発見と治療により、完治が可能です。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の6型および11型に感染することで発症する性感染症です。HPVには多くの型が存在し、子宮頸がんの原因となるハイリスク型HPVとは異なり、尖圭コンジローマを引き起こすのはローリスク型のHPVです。
感染経路
HPVは感染者との接触により小さな傷口などから体内に侵入し、感染が成立します。感染後、数週間から最大で8ヶ月の潜伏期間があり、感染源の特定が難しい場合も少なくありません。また、母親が尖圭コンジローマに感染していると、出産時に産道を通じて新生児に感染し、喉に尖圭コンジローマが発生することがあります。
主な症状
性器や肛門周辺にイボが発生することが特徴です。
イボは最初は小さく、尖った形をしていますが、放置するとカリフラワー状に大きくなります。
女性の場合は、膣の内側にもイボができることがあり、発見が遅れることがあります。
これらのイボは痛みやかゆみがないため、気づきにくいこともあります。
尖圭コンジローマは性器以外にも口や喉にも感染し、口内炎と誤解されることがありますが、尖圭コンジローマのイボには痛みがありません。
検査
診断は主に視診によって行われます。問診で症状や感染部位を確認し、視覚的にイボの存在を確認します。
必要に応じて、患部から検体を採取してウイルスの有無を確認することもあります。
他の性感染症の可能性がある場合には、併発感染の検査も実施されます。
治療
治療には外科療法と薬物療法の2種類があります。
外科療法は、電気メスやレーザーでイボを焼き切る、または液体窒素による凍結療法が用いられます。
薬物療法は、軟膏の塗布によってイボを治療します。
再発のリスク
現在の医療では、尖圭コンジローマを引き起こすHPVウイルスを完全に体内から排除する方法はありません。外科的にイボを除去しても、ウイルスが体内に残っているため、再発のリスクがあります。治療後、3ヶ月以内に25%の確率で再発するとされています。
予防策としては、HPVワクチンの接種や、コンドームの使用などがありますが、これも感染リスクを完全に排除するものではありません。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の1型(HSV-1)または2型(HSV-2)によって引き起こされる性感染症です。これにより、性器やその周辺に水疱や潰瘍が発生し、痛みを伴います。一度感染するとウイルスが神経節に潜伏し、再発を繰り返すことが特徴です。
感染経路
HSV-1は主に口唇に感染し、HSV-2は主に性器に感染します。
口唇ヘルペスにかかった人とのオーラルセックスで、HSV-1が性器に感染することもあります。
性行為以外にも、唾液や分泌物を介して感染する場合があり、症状がなくてもウイルスが伝播することがあります。
妊娠中に母親から赤ちゃんに感染し、新生児ヘルペスを引き起こすこともあり、皮膚や臓器に重大な影響を及ぼす場合があります。
主な症状
初感染後、2~10日の潜伏期間の後、外陰部に激しい痛みを伴う水疱や潰瘍が現れます。
潰瘍は左右対称に発生することが多く、重症の場合は臀部や大腿にも広がります。
38℃以上の発熱、排尿困難や歩行困難といった重症化も見られることがあります。
症状は2~4週間で自然に治癒しますが、一度感染すると、月経、性行為、過労、免疫力の低下などが誘因となって再発することが一般的です。
初感染時が最も症状が重く、再発時は比較的軽度になることが多いです。
一部の感染者は無症状で経過することもありますが、再発率は高い性感染症の一つです。
検査
視診による診断が主流ですが、必要に応じてウイルス検査や血液検査を行います。
血液検査は抗体価を調べるため、症状が出ていない時にも行われることがあります。
治療
抗ヘルペスウイルス薬を初発の場合は5~10日間、再発の場合は5日程度服用します。
症状の早期治療が重要で、発症から24時間以内の内服開始が推奨されます。これにより症状の進行を抑え、治癒期間を短縮します。
外用薬としては、ゾビラックス軟膏やアラセナA軟膏が使用されます。
再発について
再発時は、チクチクやヒリヒリといった前駆症状が現れることがあり、この段階での早めの治療が推奨されます。
カンジタ症
カンジダ症は、カンジダ属の真菌(主にカンジダ・アルビカンス)によって引き起こされる感染症です。主に外陰部、腟、亀頭、尿道に症状が現れますが、膀胱や腎盂腎炎に進展することもあります。一般的に、カンジダは体内や皮膚上に存在していますが、免疫力の低下や抗生物質の長期使用などで、異常に増殖し症状を引き起こします。
カンジダ症の主な症状
外陰部カンジダ症・腟炎
- 痒みや痛み、性交痛、排尿時の痛み
- ヨーグルト状のカスのような帯下(おりもの)
- 外陰部やその周辺の皮膚が赤くなり、腫れる
亀頭炎
- 亀頭の赤みや腫れ
- 痒みや違和感、分泌物の出現
カンジダ性尿道炎
- 排尿時の痛みや透明でサラサラした分泌物
- 進行すると頻尿、尿意切迫、血尿、排尿困難など
- 腎盂腎炎に進展すると発熱が見られることもあります
検査方法
女性の場合、腟分泌物や外陰部の擦過検体を培養または鏡検で確認します。
男性の場合、尿や亀頭擦過検体の検査を行います。
膀胱炎を疑う場合は、膀胱鏡検査で白いカンジダ菌の塊を確認することがあります。
治療
無症状であれば治療は通常不要です。
症状がある場合や免疫力が低下している場合(妊婦や泌尿器科領域の処置前後など)は抗真菌薬、で治療します。また、腟炎の場合は抗真菌薬の腟錠、内服薬、外用薬で治療します。亀頭炎は抗真菌薬の外用薬、内服薬で治療します。尿路感染症は抗真菌薬の内服薬、点滴で治療します。
予防
まずは、清潔を保つことが重要です。刺激性の強い洗浄剤の使用を避けることや、通気性の良い下着を着用することが推奨されます。
症状がある場合は、性交渉を控えることが再発予防になります。
抗生物質の長期使用など、カンジダ症の危険因子を避けることも有効です。
性病・性感染症の予防
性感染症は、罹患した病気によって症状が異なりますが、予防方法は大体共通しています。ポイントは清潔にすることとパートナーを限定することです。
現在の性感染症の原因は主にセックスやオーラルセックス(口腔性交)ですが、アナルセックス(肛門性交)などの方もいらっしゃいます。予防するには下記の点に注意が必要です。
- 性交渉前にシャワーなどで身体を清潔にする
- 寝具を清潔に維持する
- 歯を磨く時、口内に傷を作らないようにする
- セックスは特定の相手としかしない
- コンドームを必ず使用する
性病・性感染症のブライダルチェック(自費検査)
も行っています。
性感染症はいつ誰がかかっても不思議ではない病気です。
自覚症状のない疾患もあるので、自分が気付かないうちに感染してしまっている場合も少なくありません。
大切なパートナーと一緒に楽しい時間を過ごすために、気になる方は性病(STD)検査を受けることをお勧めします。
当院では、ブライダルチェックとして、血液検査による梅毒・エイズ・肝炎の診断、尿検査による淋病・クラミジアの診断を行っています。自費検査は自覚症状のない方が対象です。自覚症状がある方は保険適応となります。
費用について
初診料 | 1,100円 | |
---|---|---|
1.梅毒(定性検査) | RPR,TP(定性) | 3,300円 |
2.B型肝炎、C型肝炎 | HBs,HCV抗体 | 4,400円 |
3.HIV検査 | HIV | 4,400円 |
4.クラミジアPCR | 検尿 | 5,500円 |
5.クラミジア・淋菌PCR | 検尿 | 8,800円 |
6.トリコモナス/マイコプラズマ・ジェニタリウム PCR | 検尿 | 6,600円 |
1+2+3セット(採血) | 9,900円 | |
5+6セット(検尿) | 13,000円 | |
1+2+3+5+6(採血+検尿) | 19,800円 |